談話会情報

月曜日、16:00 から 17:00 まで理学部数理科学記念館(川井ホール)にて行ないます。

これからの談話会

  • 2024.12.2(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:石毛 和弘 氏(東京大学)

    題目: Dirichlet heat flow による凸性保存について
    概要:
    1976 年に、Brascamp と Lieb が、ユークリッド空間上の熱流による対数凸の保存性、つまり、初期関数の対数が上に凸であるならば、対応する熱方程式の解の対数は(空間変数の関数として)常に上に凸であることを示した。この研究は様々な発展をもたらし現在に至る。本講演の前半では、ユークリッド空間上の凸領域における Dirichlet heat flow が保存する凸性の特徴づけについて、P. Salani (University of Florence)、A. Takatsu (Tokyo Metropolitan University) との共同研究に基づき概説する。後半部分においては、A. Takatsu、H. Tokunaga との共同研究に基づき、一般のリーマン多様体上の凸領域における Dirichlet heat flow が保存する凸性の有無を議論する。

  • 2025.1.6(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:松村 慎一 氏 (東北大学)

    題目: Beauville-Bogomolov-Yau decomposition and positively curved varieties
    概要:
    Calabi-Yau多様体とは平坦なリッチ曲率をもつ図形であり, 多様体の世界の基本的な構成要素のひとつであると考えられています. 古典的なBeauville-Bogomolov-Yauの分解定理によれば, 非特異なCalabi-Yau多様体はstrict Calabi-Yau, Hyperkaehler, トーラスの三種類に分解されることが知られています. 一方で, 極小モデル理論の観点からは, 特異点を持つ多様体や因子との組を考えるのが自然であり, Beauville-Bogomolov-Yau分解もこの枠組みへの一般化が期待されています. 本講演では, ''非負曲率''を持つ多様体の構造定理に対する講演者の研究成果について概説し, そのBeauville-Bogomolov-Yau分解への応用について議論します. この講演はJuanyong Wang(中国科学院)との共同研究に基づいています.

  • 2025.1.20(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:Martin Kružík 氏 (Czech Academy of Sciences and Czech Technical University)

    題目: Non-interpenetration of Matter in Lower-Dimensional Structures
    概要:
    The non-interpenetration of matter presents a well-known challenge in the study of solid elastic materials, involving both analytical and geometrical considerations. In bulk models, the concept of non-interpenetration is relatively well understood, although many open problems remain. However, in lower-dimensional structures such as plates and rods, the situation is less clear. Focusing on rods in the plane, we will introduce a possible concept for non-interpenetration and present a density and $\Gamma$-limit result. This is joint work with B. Benešová, D. Campbell, and S. Hencl (all based in Prague).

  • 2025.1.27(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:甲斐 亘 氏 (東北大学)

    題目: 数体の素元に現れる線形パターン
    概要:
    講演者は2020年の論文で、素数のなす等差数列についてのGreen-Taoの定理を、数体一般に拡張しました(見村万佐人、宗政昭弘、関真一朗、吉野聖人との共著)。数体$K$の整数環を$O_K$と書くと、上の定理は或る具体的な形の有限個の$O_K$係数2変数1次式が同時に素元値をとる、という形に定式化できます。これをもっと一般の1次式(ただし2変数以上)に拡張できたのでお話しします。有理整数$Z$の場合はGreen-Tao-Zieglerの2012年の結果です。扱える1次式が増えたおかげで、数体上の多様体の有理点問題に応用があります。


過去の記録

2024年度

  • 2024.4.22(月) | 談話会

    ※対面とリアルタイム配信

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    講演者:山崎 雅人 氏 (東京大学)

    題目: 量子力学の数学とは何か
    概要:
    量子力学は20世紀初頭に誕生した物理学の一大理論体系であり、その有用性は理論的にも実用的にも明白である。しかし一方、その「本質」が何であるのか、また量子力学がなぜ現在の形をとっているのかについては議論の余地がある。本談話会では、このトピックに関連したいくつかの数学的話題について紹介し、この問題に数学的にアプローチする可能性について議論する。講演者はこの話題について通常の意味での専門家ではないことには注意する必要があるが、皆さんが「量子力学そのものの数学」について考える端緒となれば幸いである。

  • 2024.5.13(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:山木 壱彦 氏 (東北大学)

    題目: 代数多様体の算術と非アルキメデス的幾何
    概要:
    アラケロフ幾何では、代数体上の代数多様体の算術的性質を調べるにあたって、無限素点上での解析が重要な役割を果たす。たとえば、「ある種の代数多様体上の高さの小さい点が少ない」という型の主張はボゴモロフ予想と呼ばれるが、その証明では無限素点上の複素解析空間において代数的点がどのように分布するかを標準測度を参照して記述することが鍵となった。さて、函数体上の代数多様体においても高さの概念があるので、同様の主張を考えることができる。しかしながら、代数体上の場合と同様の考察をしようとしても、函数体上には無限素点が無く対応する複素解析空間を考えることができない。そこでどの代替物となるのが、非アルキメデス的素点上のベルコビッチ解析空間である。実際、幾何的ボゴモロフ予想においては、ベルコビッチ解析空間における標準測度を詳しく調べることにより代数体上の場合と似た議論が回るということが、解決に向けての大きなステップとなった。本講演では、(幾何的)ボゴモロフ予想を題材に、こうした算術的問題とベルコビッチ解析空間等の非アルキメデス幾何との関係について概説する。時間が許せば、講演者が最近研究を進めている(算術的問題とは直接関係は無いが幾何的ボゴモロフ予想の研究を通じて触発されたテーマである)ベルコビッチ空間の骨格とそのトロピカル化についても紹介する。

  • 2024.5.20(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:納谷 信 氏 (名古屋大学)

    題目: ラプラシアン第1固有値の最大化について
    概要:
    ラプラシアンの第1固有値を最大化する問題は、多様体(連続)の場合はBerger (1973)、グラフ(離散)の場合はFiedler(1990)に遡る。この講演では、これらの問題の進展を概観するとともに、それぞれの離散、連続類似を定式化して比較する。

  • 2024.5.27(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:清水 伸高 氏 (東京工業大学)

    題目: 数学と理論計算機科学の相互作用: 擬似ランダムネス
    概要:
    かの有名な物理学者Einsteinは量子が確率的に振る舞うという考え方に対し「神はサイコロを振らない」と否定的な見解を持ったとされている。では、恐れ多いことだが神の(6面の)サイコロを(2面の)コインにすり替えて騙してしまうことは可能だろうか? 原理的にはコイントス1回で6面サイコロをシミュレーションすることは不可能であり、実際に情報理論の枠組みで考えると厳密な枠組みで議論し証明できる。
    しかし、騙す対象を全知全能な神ではなく、実行時間が限られた多項式時間アルゴリズムに限定すると大きく話は変わってくる。大雑把にいうと、能力が制限された敵対者にとって「ランダムに見える」という性質を擬似ランダムといい、その敵対者の性能によっては騙すことが可能であることが知られている。この概念は計算機科学において非常に重要な研究トピックである。例えば暗号化された文章は敵対者にとって擬似ランダムに振る舞わなければ何かしらの情報を与えてしまうことにつながる。
    また、擬似ランダムネスの概念は数学と理論計算機科学を繋げる大きな橋である。例えば加法的組合せ論においても重要な役割を果たしており、例えば素数全体の集合が無限の長さの等差数列を含むことを主張するGreen-Taoの定理の証明の一部(Szemerédiの定理の相対化の部分)は擬似ランダムネスの枠組みで解釈できる。また、幾何学的群論の重要な成果の一つであるラマヌジャングラフ(より一般にエクスパンダーグラフ)は計算量理論においてある種の擬似ランダムネスの結果の証明に重要な貢献を与えている。
    本発表では理論計算機科学と数学の間にかかっている擬似ランダムネスという大きな橋について、かいつまんで紹介する。

  • 2024.6.3(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:猪奥 倫左 氏 (東北大学)

    題目: 非線形増大度の分類に基づく半線形楕円型方程式の特異解の構成
    概要:
    半線形楕円型方程式の球対称特異解の構造は,べき乗非線形項の場合にはよく理解されている.本講演では既存の結果を概観したのち,単調増大する一般の非線形項に対して増大度の分類を導入し,それに基づく球対称特異解の構成方法について説明する.

  • 2024.6.24(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:宮本 安人 氏 (東京大学)

    題目: 拡大する円環領域における球対称解のモース指数の漸近公式
    概要:
    円環領域上の半線形楕円型偏微分方程式のノイマン問題の非自明球対称解について考える.円環の幅を1に固定して内径Rを大きくすると,球対称解からなる滑らかな解の枝が存在する.このとき,Rが大きくなるとともに無限個の固有値が次々と原点を通過してモース指数が無限大に増大し,それに伴って対称性破壊分岐を起こすことが知られている.しかしモース指数の増大度についてはこれまであまり研究がなされていなかった.ここでは,アレン・カーン方程式とスカラーフィールド方程式の球対称解のモース指数の漸近公式を導出し,解の形状がモース指数に与える影響について考える.本講演は中島主恵氏(東京海洋大学)との共同研究に基づく.

  • 2024.7.8(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:井上 瑛二 氏 (理化学研究所)

    題目: Kahler時空のPerelmanエントロピー
    概要:
    PerelmanエントロピーはもともとRicciフローに沿った単調量としてPerelmanが導入した汎函数で、局所非崩壊定理の証明に用いられることは有名である。PerelmanエントロピーがRicciフローの文脈から切り離して語られることは多くないが、最近の研究でPerelmanエントロピーがKahler時空の多重ポテンシャル論を介して定スカラー曲率Kahler計量、代数多様体のK安定性や最適退化問題と結びつき、Ricciフローそのものより重要な幾何学量であることが示唆されつつある。これを紹介したい。

  • 2024.7.22(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:中野 史彦 氏 (東北大学)

    題目: Temperley - Lieb 演算子の持ち上げとRazumov - Stroganov 予想について
    概要:
    Razumov - Stroganov 予想とはリンクパターン上の生成する線型空間上のあるハミルトニアンの基底状態に対応するFPLの個数が現れるという予想で、2010年に解決されたが、O(1)-loop model, 交代符号行列を介して2次元統計力学の模型や組み合わせ論との様々なつながりがあり、今も注目されている。Temperley - Lieb 演算子の持ち上げを用いたRS予想のより平易な証明について議論する。

  • 2024.10.7(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:竹内 耕太 氏(筑波大学)

    題目: ウルトラプロダクトによる構造の拡大と保存
    概要:
    ウルトラプロダクト(あるいはウルトラパワー)は任意に与えられた数学的構造を、論理式で表せる性質を保ちながら拡大する古典的な手法である。本講演では、一階述語論理式を保つ通常のウルトラプロダクト、距離空間に対して適用できる連続論理式を保つウルトラプロダクト、順序構造におけるcofinalな拡大を与えるウルトラプロダクトやその拡張について説明し、モデル理論の基本的な考え方や興味を紹介する。

  • 2024.10.14(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:前川 泰則 氏(京都大学)

    題目: プラントル境界層展開の数学解析に関する近年の進展について
    概要:
    流体力学における基礎方程式である非圧縮性ナヴィエ・ストークス方程式を粘着境界条件下で考察した場合、流体の粘性が非常に小さい場合(レイノルズ数が大きい場合)には固体壁近傍で境界層が生じる。境界層を含めた解の漸近挙動を調べることは理論的にも応用上も重要であるが、潜在的な微分損失構造の困難さによって、数学的に厳密な解析ができるようになったのは近年になってからである。本講演では、プラントル境界層展開の数学解析が大きく進展した2000年前後以降の研究について概観する。

  • 2024.10.28(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:服部 新 氏(東京都市大学)

    題目: Drinfeld保型形式とそのP進的性質について
    概要:
    Drinfeld保型形式は楕円保型形式の関数体類似である。代数体と有限体上の一変数関数体とは数論的によく似た性質を持っており、通例、代数体側の数論の適切な類似が関数体側でも成り立つという期待が持たれている。一方で、楕円保型形式の数論、特にそのp進的理論が高度に発展しているのに対し、関数体側の類似物であるDrinfeld保型形式については、今日に至ってもあまり理解が進んでいないように思われる。本講演では、Drinfeld保型形式に関する最近の話題を中心に、何が分かっていて何が分かっていないのかを紹介したい。

  • 2024.11.11(月) | 談話会

    ※対面

    講演者:後藤 ゆきみ 氏(学習院大学)

    題目: Spontaneous Symmetry Breaking in a Lattice Nambu–Jona-Lasinio Model
    概要:
    量子色力学で重要な概念としてカイラル対称性の破れとそれに伴うフェルミオンの質量生成があるが、その証明は困難が多い。 その理解に格子上の量子色力学は成功していると見られているものの、数学的結果はいまだ限られている。 この講演では、格子上のフェルミオンの定式化のひとつであるスタッガード・フェルミオンをもちいて、対称性の破れについて数学的に得られた結果を紹介する。本講演は高麗徹氏との共同研究にもとづく。


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