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卒業生からのメッセージ
私は、2006年に入学し2015年に博士号を取得するまでの10年近くの間東北大学の数学科のお世話になりました。現在は大阪大学で数学の研究・教育に携わっています。専門は整数論とよばれる分野です。例えば、方程式に整数解がどれくらいあるか、という問がL関数という面白い関数の値と結びつくという不思議な現象が予想・観察されており、このような現象を解明すべく日々研究に取り組んでいます。
東北大では、非常に恵まれた環境で数学を勉強・研究できました。まず、周りを見渡すと一緒に数学を勉強する多くの友人が見つかります。私もよく友人や先輩・後輩を巻き込んで自主ゼミを行い、数学漬けの充実した日々を過ごすことができました。また、東北大には第一線で活躍する研究者が数多く在籍しており、様々な分野で指導を受けることができます。私は当時在籍されていた小林真一先生に非常に手厚く指導していただいたおかげで、整数論の研究で博士号を取得できただけでなく、大変幸運なことに現在は数学の研究を職業にできています。大学に入学した頃は全く想像していなかったことなので、東北大学に入学していなかったら今の私はなかったことでしょう。
今こうして東北大学での学生生活を振り返ってみてもやはり、友人や指導教員をはじめとした、人との出逢いにとても恵まれていたと感じます。学生時代に数学科で知り合った友人たちは、今でもたまに集まってお酒を飲んでたわいもない話で笑いあったり、一緒に旅行にでかけたりする得難い友人です。
このように、私にとって東北大学はとても素晴らしい場所でした。これを読んで少しでも、東北大学で数学を勉強してみようかなと思ってもらえれば嬉しい限りです。
2005年から博士課程前後期5年間、また2011年から助教としておよそ2年間過ごしました。その後、九州大学を経て現在は東京工業大学で研究・教育に勤しんでいます。偏微分方程式論を専門とし、一見複雑な数理現象の中に潜む単純で美しい“仕組み”を発見することに喜びを感じています。
幾つかの大学での滞在経験を通じて思うのは、東北大学では談話会をはじめとする分野横断的な研究交流が盛んであるということです。定期的に行われる談話会では様々な専門分野の講師が最先端の研究内容を(少なくとも講演の最初は)専門外の方々にも分かりやすく解説してくださり、当該研究分野の思想や動機付け、研究方法などを理解する非常に良い機会となっています。他大学での談話会は関連分野の聴講者しか参加しないことも多いのですが、東北大学では真に異分野交流が実現できていると感じます。また、自然豊かな青葉山キャンパスではゆったりとした時間の中で数学を学ぶことができ、私も学生時代は院生室や資料室、図書館に入り浸りながらも、気分転換に散歩したりと、とても有意義な時間を過ごしました。
皆さんも是非、学びの“杜”で実りある時間をお過ごしください。
気付いたら卒業し、仙台を離れて10年以上経ちましたが、今でもありありと思い出せるほど仙台での暮らしは楽しかったです。冬の厳しさや夏に出る大きい虫など、辛い経験が全くないわけではありませんが、圧倒的に良い思い出の方が多いです。楽しく過ごせたことは、先生方のお陰であるところが大きいと思います。何かを押し付けられることなく自由気儘に勉強し、その一方で分からないことなどを質問すればいつでも優しく熱心に対応していただきました。特に専門に関する質問対応時の先生方は、自分の数学に対する深い知識のみならず、スタンドが発動できそうなくらい強い信念を持っているように見え、憧れたものです。
私の専門は大雑把に言うと「曲がっている」という曖昧な感覚を数式で正確に表す微分幾何学です。私が数学を好きになったのは高1で、数学の中で幾何学を選んだのは4年ゼミを決めるときでした。割と遅いのではないでしょうか?一方で、同級生には幼いときから数学が好きでどの分野を専攻するか決めていた人もいました。このように東北大はどんな人でも受け入れてくれる門戸開放の精神が強いと思います。悩める子鷲も勇往邁進する若獅子も、学都仙台で素敵な時間をお過ごしください!
2006年に博士号を取得するまで学生として9年間、研究員や情報科学研究科の助教として6年間、計15年もの間を東北大学で過ごしました。2012年に茨城大学理学部に移り、研究生活を続けています。専門は解析学の中の偏微分方程式論で、特に生物現象に見られるパターン形成を記述する数理モデルの解析を行っています。
数学科では、学部4年のときに専門的な内容を学ぶセミナーが始まります。私は当時、解析学が少し苦手でした。しかし、苦手だからこそ理解したいという思いも強く、あえて微分方程式の研究室を希望しました。セミナー当初は、とても時間をかけて課題に取り組んだことを覚えています。東北大学には、このようにじっくり時間をかけて学べる環境がありました。そして、興味を持ったことに取り組める環境もそろっていました。そのため、研究に対する意欲をどんどん高めることができました。さらに、研究会がよく開かれ、人との交流が多くあることも、とても良かったです。私自身、指導教員との出会いから始まり、東北大学では大きなチャンスに繋がる人々との出会いに恵まれました。
研究者を目指す学生も、社会に出て知識を活かしたい学生も、東北大学で数学に一生懸命になれる贅沢な時間を過ごしてほしいと思います。
東北大学の数学科では、学部3年生までは様々な分野の基礎を学び、学部4年生からゼミに所属して、各自興味のある分野について深く勉強・研究していきます。
私は学部4年生からは確率論を専攻しておりました。確率と聞くと応用数学のイメージが強いかもしれませんが、確率論には純粋数学の側面もあり、非常に奥が深い分野でした。
確率論に限られた話ではありませんが、数学を学ぶことで”なぜそうなるのか”、”何のためにそれを考えたのか”を粘り強く考える「論理的思考力」が自然と身についていきました。現在は生命保険会社にて、「アクチュアリー」という保険数理の専門職として、主に保険料の算定や新規投資案件の収益検証などを担当しております。
保険料の算定1つ取っても、算定の考え方は合理的か、収益性やリスク管理の観点で問題がないかなど、様々な視点で水準を検討する必要があり、加えて自分が計算したアウトプットを上位者や経営層に分かりやすく伝えるスキルも要求されます。このようなスキルはまさに発表や論文作成の過程で培われていくものであり、数学を通じて身についた「論理的思考力」は現在の私の強みとなっています。
東北大学理学部数学科の学生の皆様におかれましても、中途半端な理解に満足せず、粘り強く考える姿勢を身につけていただき、活躍できる人材となっていただければと思います。
数学科での楽しく充実した日々は、今でも忘れがたい思い出です。数学科には、純粋で、子供のような感性を持つ、大変魅力ある人が多く存在しているということも、常に感じていました。大学一年生の時に、図書館にこもり、数学の文法ともいうべき解析学の初歩の言葉遣いと格闘し、一行読むのに数時間を費やし「ああ、そうか」とわかって自由になれた時のあの気持ちは忘れられません。いろいろな人達と本の輪読(ゼミ)をやったり、教授室を訪ねて行って、本を借りたり、勉強会に混ぜてもらったりと充実した時間を過ごしました。
卒業後は高校教師になり、生徒達に数学の楽しさを伝えたいという思いで、ずっと教壇に立ってきました。おかげでたくさんの宝物(卒業生達)とめぐり合うことができました。
東北大学の数学科は自由な雰囲気を持ち、上下関係も緩やかで、学年を超えて数学を語り合ったり、助手(今の助教)の人達とも交流したりしてアカデミックな環境でした。このような良い伝統を持つ東北大学数学科で、大いに数学を学んでほしいと願っています。
1996年に理学部に入学してから2003年秋に博士を取得して京都大学に移るまで東北大学で過ごしました。高校も仙台二校(当時は男子校)だったので、10年半の間あの辺りに 通っていました。現在は大阪大学で数学の研究を続けています。専門は微分幾何で、空間の曲がり方に関連する種々の性質(最短線の描く三角形の形状や熱の拡散の仕方な ど)の間の関係を調べています。
東北大学の数学科は幅広い分野の専門家を擁し、また談話会やセミナーが活発で分野間の風通しが良いのが特長です。私自身も修士と博士で 違う先生の指導を受け、それによって自分の研究分野を多面的に見ることができるようになったと思います。
東北ならではののんびりした雰囲気と、自然に囲まれたキャンパスは、じっくりと勉強・研究をしたい人に最適な環境です。
私は1998年に東北大学理学部数学科に入学、2002年に大学院に進学しました。博士課程に進み、中村哲男先生の指導のもと2007年に博士号を取るまでの9年間、東北大学で学生生活を送りました。その後も東北大学で研究をしていた時期が4年間ありますので、合計で13年もの間を東北大学で過ごしたことになります。今でも青葉山を訪れると、自分が数学の研究を始めた場所ということもあり、身が引き締まる思いがします。現在は東京電機大学で研究・教育を行っております。
私の専門は整数論で、大学院生時代からL関数と呼ばれる整数論において重要な役割を果たす関数と楕円曲線の有理点といった幾何的な対象との間の関係を研究しています。整数の世界を調べることは非常に古くから行われてきましたが、未だに解決の糸口さえ掴めていない難問も数多くあり、非常に魅力的な研究分野だと感じています。東北大学にはこの分野で活躍されている研究者がたくさんおられますので、これから整数論を研究してみたい学生さんには非常に恵まれた環境といえるでしょう。
東北大学から同じ研究分野で活躍する後輩が生まれることを楽しみにしています。
アクチュアリーという、保険会社で数字を扱う仕事をしています。保険商品の開発や決算における負債の評価、リスク管理の分野に関わっています。これらの業務を通じて、保険契約に関わる数字を決めたり、会社の経営に必要な情報を経営者に正しく伝えたりすることが、重要な使命です。 これを実現するためには、まずは課題を理解して、その課題を解決することが大事です。そのために、数学を使うのですが、数学だけではなく、関連する分野を知らないといけないことも多く、その勉強することも多いです。複数の視点で検討し、考えられるいくつかの選択肢の中から、最適な答えを見つけ、それを関係者に納得してもらうのが、難しい点であり、やりがいのある点でもあります。
学生時代、セミナーでの発表や修士論文作成の際に、課題を解決するために、頭を悩ましたり、関連する文献をたくさん読んだりして、取り組んでいました。このことを思い出すと、このころに身に着けた姿勢が仕事に生かされていると感じています。
私は平成2年3月に数学科を卒業しました。数学科時代は猪狩先生の関数解析のゼミに所属し、数学の難しさと楽しさを学びました。特に「解答のない問題を自分自身で考え抜き、自分なりの解答を導き出すこと。」の大切さを学ばせていただいたと思っています。また、サークル(空手同好会)の合宿や、芋煮会で騒いだことを今も懐かしく思い出します。当時の友人は今も私の財産だと思っております。
現在は信託銀行に勤務し年金信託業務に携わっております。各企業に勤務する方が、老後の心配なく、安心して仕事に取り組んでいただけるよう、退職後に受け取る年金資産を管理・運用する仕事です。年金資産は国内の資産だけでなく、世界の成長性のある国々の資産にも投資されるため、新興国の社会資本整備にもつなげることができます。私自身は数学や確率統計の経験を活かし、様々な経済環境の変化にも耐えうる年金制度の設計等を中心に担当してきました。社会や経済環境の変化も激しく、自分自身の足りなさや、考え抜くこと、学ぶ姿勢を持ち続けることの大切さを今も痛感しております。 今後の東北大学理学部数学科の学生の皆さんも、学び考え抜く姿勢を忘れずに一層活躍されることを祈念しております。
私は企業の研究所でセキュリティ(主に暗号)の研究をしています。 暗号は「情報にアクセスできる人=秘密情報(鍵)を持っている人」 と割り切って、情報処理のモデル化、鍵の有無による解法の難しさの ギャップを取り扱います。 暗号は整数論(素因数分解問題や楕円曲線暗号)が実社会に応用された 稀有な例として有名ですが、実際には非可換群、計算量理論、符号理論、 グレブナー基底など様々な数学の分野を横断する研究分野でもあります。 私の仕事では、符号理論とブール環を良く使います。 学部のころは部活動に打ち込み、講義はいつも夢うつつで落第点ギリギリでの進級を繰り返していたのですが、いまだに数学と縁が切れない仕事を しているというのは不思議なものです (おかげで人一倍「勉強しておけばよかった!」という思いを強く していますが...)。
私が学生だったころに比べると、今の社会は数学の知識や考え方を活用する 機会が大きくなっていると思います。 皆さんが青葉山中で鍛えた体力と知力で社会に羽ばたく日を楽しみに お待ちしています。