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数学科の紹介
数学とはいったいどのような学問でしょうか。
様々な数の間に成り立つ不思議な関係や,図形の美しい性質などはいつの時代にも人々の関心を惹き付けずにはおきません。例えば凸多面体においては(面の数)-(辺の数)+(頂点の数)=2 という関係が常に成り立つというオイラーの定理があります。実は凹凸があり、穴の開いた多面体でも同様の定理が成り立つということがわかっています。このような不思議な美しい関係をより深く研究するのが,数学という学問です。
また,皆さんは高校で微分や積分を勉強されたと思います。そのときに,微分積分学とはニュートンが発見したものであり,物体の運動距離を時間の関数で表したときに,それを微分すると速度がわかりそれを更に微分すると加速度がわかる,という事を学ばれたことでしょう。このように,数学の一つの側面は自然界の現象を記述することであるということができます。
また,逆に数学者が考え出した理論が,実際の物理現象を説明するのに役に立つこともよくあります。例えば,19世紀の数学者であるリーマンが考えた曲った空間における幾何学,すなわちリーマン幾何学は,20世紀になってからアインシュタインによって一般相対性理論を記述するために用いられて成功を収めました。
このような数学との関係は物理学に限らず,化学,生物学,情報科学,工学,社会科学などとの間にもあります。例えば、コンピューターで使われる2進数は 純粋数学の研究の中で発見されましたし、暗号理論も整数の理論に基礎をおいています。今後も,学問の諸分野における数学の重要性は益々高まっていくものと思われます。
東北大学理学部数学科では,1911年の数学科設置以来,優れた研究が数多くなされてきました。淡中の双対定理で有名な淡中忠郎教授や佐々木多様体の理論で知られる佐々木重夫教授などにより,その当時における最先端の研究成果が得られてきましたし、現在も,解析学,代数学,幾何学等の様々な分野において世界中の研究者と競い合って活発な研究が行われています。
本数学科の特色を挙げると,まず全国でも一,二を争う価値と規模を持つ数学関連図書を備えていることでしょう。数学棟の三階にある資料室には,外国及び 日本の単行本,雑誌が6万冊以上も配架されており,数学の研究を行う上では何不自由のない環境といえるでしょう。また,東北大学数学科では,東北数学雑誌 という数学の専門誌を発行しています。これは,数学科創立と同時に日本で最初の数学専門の欧文誌として発刊されたもので,世界中の図書館にも常備されてい る権威ある雑誌です。
カリキュラム
全学教育で勉強する数学の授業の他に、数学科の新入生を対象にした専門科目として、1セメスターの数学序論A[基礎数学]があり、ここでは高校の数学 から大学の数学へ支障なく進められるような準備を演習形式を取り入れながら行います。次に2セメスターの数学序論B[集合論]で現代数学を勉強する上で最も基本的な無限集合を理解するための理論を勉強します。
3年生までの授業で現代数学全般を理解するための基礎的な知識を勉強します。詳しい授業内容については,別表のカリキュラムを参照してください。4年生に おける講義は,3年生までの講義よりも専門的で様々な分野にわたります。これらの通常の講義以外にも,他大学の先生により行われる集中講義もいくつかあり,このような講義を通じて現代数学の一端に触れることができます。
また,4年生ではセミナーがあります。これは学生が5人程度の小グループに分かれて,担当の先生の指導のもとに外国語で書かれた専門書をテキストとして1年間勉強するものです。このセミナーは必修であり、数学科のもっとも重要な科目といえるでしょう。
卒業後の進路
数学科の卒業生は,学界,教育界,電気やソフトを中心とする産業界、生命保険、銀行を中心とする金融業会などの様々な分野で活躍しています。特に、数学の教員免許を取得して中学校や高等学校の教員になる人が多くいます。さらに、博士課程前期(修士課程)を修了すると、教員の専修免許を取得することもできます。また、博士課程の後期まで進学して学位を得て大学などの研究者に進む道もあります。一方、保険や年金の管理において確率などの数学の知識を必要とする専門職(アクチュアリー)があり、この分野にも多くの人材を供給しています。
これらの例に限らず、数学的な考え方,論理を組み立て一つ一つ議論を積み上げていく能力は,どのような世界でも必要とされているため,数学科卒業生の活躍の場は非常に広いといえます。数学科では,向学心と好奇心にあふれる諸君を待っています。