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専攻長からの挨拶
令和6年度の数学専攻長を拝命いたしました赤木剛朗と申します。
どうぞよろしくお願いいたします。
東北大学の数学教室(Mathematical Institute)の歴史は東北帝国大学が設立された4年後の1911年(明治44年、これは東北帝国大学理科大学の開設と同年)まで遡り、すでに110年以上の間、国内外に多くの優秀な数理人材を輩出しております。その間、1947年(昭和22年)に東北帝国大学が東北大学と改称し、新制大学に改組され、さらに1994年(平成6年)の大学院重点化、2004年(平成16年)の国立大学法人化を経て数学教室も変遷してきました。1995年に大学院重点化整備が完了するとともに、教員の本所属も東北大学理学部数学科から東北大学大学院理学研究科数学専攻へと変わり、現在に至ります。また2011年(平成23年)の東日本大震災の影響も大きく、被災した数学棟は改修・増築され現在の姿となりました。
2019年末ごろからはじまった新型コロナの騒動も、数学教室の研究・教育活動に大きな影響を及ぼしました。コロナ禍に入った当初(2020年ごろ)は対面での活動が自粛となり、授業も慣れないオンラインで行うことを余儀なくされました。その後、数学専攻の教室設備も(必要最低限の)オンライン対応ができるようにアップグレードされ、また教員・学生の両者がオンラインに慣れたこともあり、対面自粛が完全に解除された今日でもオンラインツールは引き続き有効活用されており、ポストコロナ時代のニューノーマルの一つになったように思います。(コロナ禍以前は、数学教室はもっともオンラインツールから遠い存在だったかもしれません。)
さらに今年6月には東北大学が世界トップレベルの研究水準を目指して国が新たに支援を行う「国際卓越研究大学」の水準に達していることが文部科学省から発表され、今後、東北大学は初の国際卓越研究大学の認定に向けて進んでいくことになります。「研究第一」を大学理念の一つに掲げる東北大学が、世界トップレベルと比肩する研究力の向上をはかり、また研究力に裏付けされた教育力を涵養することで、ますます多くの優秀な人材を社会に輩出する役割を果たしていくことが期待されます。数学教室もそのために必要かつ有意義な変化を模索することになるでしょう。
社会の数理人材に対する見方も変わってきたように思います。かつては数学という分野は世間から少し距離のあるものと認識されていたかもしれませんが、近年は数理科学の社会における実用性が広く認識されるようになりました。特に金融やシンクタンクなどの業界は多くの数理人材を採用しており、またAIなどのデータサイエンスの発展と共にITや製造業の業界でも数理人材の需要は増えています。さらに、数学の研究に取り組むことで育まれる「考える力」は広く社会から必要とされており、博士人材の社会での活躍も今後ますます顕著になると思われます。
このように数学教室を取り巻く環境は時々刻々と変化し、数学教室自体もそれに適応してきましたが、数学の研究や教育という点では変わらないものもあります。数学は「紙とペンだけでもできる学問分野」と言われ、しばしば大きな実験設備や最新の計算機(コンピューター)が必要な他の理工系の学問分野と対比されます。さらに付け加えれば、数学は「黒板を前にして人との議論が必要不可欠な学問分野」として最右翼に位置するものではないかと思います。数学の研究も教育もこのようにアナログな方法でかつマンパワーに頼っている点は、数学教室の開設以来(いや数学という学問の誕生以来)全く変わらないものではないかと思います。東北大学の数学教室がこれからも数学の研究・教育の根幹を失わずに、とりまく環境の変化へ有意義に対応していけるよう、微力ではありますがお役に立てるよう取り組んで参ります。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
2024年4月1日
数学専攻長・数学科長
赤木 剛朗